《腸内フローラを整えることで健康を維持できる器官》
私たちの体は体内の微生物の自律的な活動によって支えられ、また損なわれています。体を動かすエネルギー(ATP)を生産しているのはミトコンドリアですし、病原菌から体を守っているのは白血球や免疫細胞ですし、腸内細菌は食べたものの消化吸収と免疫強化、それからビタミン生成を担っています。私たちの感情や信念、体調、行動もまた彼らの活動の結果に左右されやすくなっています。したがって腸内環境を健全にしておくことは私たちの自由な身体活動および精神活動を維持する上で欠かせないメンテナンスと言えます。しかもその方法は至ってシンプルです。善玉菌を含む食品(プロバイオティクス、発酵食品の納豆、みそ、ヨーグルト、漬物、キムチ)と善玉菌の餌となる食品(プレバイオティクス、水溶性食物繊維を含む海藻類、ゴボウ、ブロッコリー、にんじん、大根、干し大根、オクラ、こんにゃく、キノコ類、リンゴ、バナナ、アボカド、もち麦、玄米、オリゴ糖を含む大豆、きな粉、玉ねぎ、にんにく、チコリ)を積極的に摂取し、砂糖やタンパク質や動物性脂質は基本的に悪玉菌の餌であって摂取には炎症を伴うことを知り、したがってこれらの代謝を速やかに行うために運動(息が上がる強度のウォーキングを三十分、週三回)と知的活動(仕事や授業以上の強度で)と十分な睡眠(記憶や脳の老廃物の整理に必要な時間)を習慣化する、基本的にはこれだけです。ただし体の各部位に棲んでいる特異的な細菌には対処が必要です。それを以下に紹介します。
《腸内フローラを構成している細菌種》
善玉菌―――ビフィズス菌、乳酸菌、ラクトバチルス菌など。
悪玉菌―――ウェルシュ菌、ブドウ球菌、有毒株の大腸菌など。
日和見菌―――バクテロイデス、非病原性大腸菌、連鎖球菌など。全五百~一千種、百万兆~一千兆個。
腸内は通常低酸素状態で善玉菌も悪玉菌も日和見菌も酸素が少ない環境で活発に働きます。しかし腸に炎症が起きたり、炎症によって腸粘膜バリアが損なわれたりすると血流量の増加や血中の酸素の流入により腸内の酸素濃度が高まって酸素に耐性のある悪玉菌や日和見菌や侵入者の病原性細菌にとって有利な環境になってしまい、有益な常在菌が駆逐されてしまいます。加えて砂糖の過剰摂取や肉食習慣や水分不足などによって腸内環境が弱酸性から酸性に変わることでも細菌叢(さいきんむら、叢は草むらの意。=
フローラ)のバランスが乱れますし、酸素不足によって善玉菌である乳酸菌が優位になって乳酸を産生しすぎるすることでも腸内は酸化してしまいます。あるいは善玉菌や日和見菌が生成する短鎖脂肪酸(酪酸、プロピオン酸、酢酸)も彼ら自身を養うエサとなると同時に全身の抗炎症作用をもたらしてくれる物質ですが作りすぎればニキビになったり、腸への刺激による腹痛や下痢を引き起こしてしまいます。したがってどの種類の菌にも体に有害な影響をもたらす力があり、それを抑制するためにお互いが存在していることを知らなくてはなりません。なので腸内環境の維持を担う善玉菌を養うことをメインに考えながらスペシャリストの日和見菌とのその働きを阻害しないよう注意し、悪玉菌には細胞や神経伝達物質の材料となるタンパク質や脂肪の分、免疫反応、そして腸内の余剰の酸素を消費する役割に徹するようにコントロールすることをイメージするべきです。それを説明するためにNHKの『クローズアップ現代』が二〇二二年六月に放送した「腸内細菌知られざるパワー」よりグラフを引用したいと思います。

グラフは日本人一千八百人の腸内細菌を調べてA.I.解析して五つのタイプに分類したもので百寿者の健康と長寿の秘訣に迫ろうというものでした。
・タイプAは高タンパク質高脂質食の人の腸内環境で最も多くの病気と関連し、最も健康的なタイプEの人と比べて糖尿病の罹患率が12.5倍、高血圧の罹患者は11倍でした。このタイプで最も多いルミノコッカスという嫌気性の酪酸産生菌(日和見菌)は通常セルロースや水溶性食物繊維やレジスタントスターチ(難消化性でんぷん)を分解して草食動物が草を栄養源にするのを助けたりヒトの腸内で短鎖脂肪酸を作り出して他の菌を養ったり腸内環境を弱酸性に保ったり、TNF-a(腫瘍壊死因子アルファ)などの炎症性サイトカインの放出を誘発して免疫機能の活性化に寄与したりしていますが、タンパク質や脂肪をエサにするようになるとグルコラムナンという強力な炎症誘発性因子を生成すると同時にムチン糖たんぱく質を分解するムチナーゼという酵素を活性化して腸粘膜を分解し、腸管のバリア機能を低下させます。この破壊活動が様々な病気を誘発するのでしょう。
・・・・ただしアッカーマンシラ・ムシニフィラなどの善玉菌がこのムチンを適度に分解することは粘膜のターンオーバー(新陳代謝)を促進して新しいムチンを積極的に産生させることでかえって粘膜バリアを回復・強化すると解釈されています。
※短鎖脂肪酸の働き―――免疫細胞に働きかけて制御性T細胞(Treg)および抗炎症性サイトカインのIL-10の産生を促すことで腸内だけでなく全身の炎症を強力に抑制する、腸の粘膜細胞の餌となることで大腸のバリア機能を強化、便通改善、プロスタグランジンE2(PGE2)の産生誘導により、マスト細胞の働きを抑制してヒスタミンの放出を抑制することで過剰なアレルギー反応(食物アレルギー、花粉症、アトピー性皮膚炎、じんましん、喘息、副鼻腔炎)や自己免疫疾患(過敏性腸症候群など)を緩和させる、腸内を弱酸性に保つことで悪玉菌の増殖を抑制する、潰瘍性大腸炎の症状を緩和、認知症リスクの低減などに寄与する、皮膚や髪の保湿、体臭の原因物質の抑制、悪玉菌の増殖及び悪玉菌が作り出すアンモニアの抑制。ただし酪酸は足の裏の匂いや銀杏やゴルゴンゾーラの匂いなどと形容されるにおい成分を持つため増えすぎると体臭の原因になる。
・タイプBは和食中心のバランスのとれた食生活を送る人の腸内環境で腸内細菌の多様性が最も高く病気のリスクが低いとされていますが、最多を占めるバクテロイデス属は同じく日和見菌として通常は食物繊維を分解して短鎖脂肪酸を生成したりβ-グルクロニダーゼを産生して胆汁うっ滞を引き起こすエストロゲンや発がん性物質の排泄を担うことで健康を維持する働きをしています。(痩せ菌と呼ばれるのはエストロゲンの抑制による効能か?)またバクテロイデス・フラジリス種は細菌の鞭毛の構成タンパク質であるフラジリン(またはフラジェリン、強力な毒素と表現される)を生成して二種の認識受容体(TLR5とNLRC4インフラマソーム)に結合することで炎症性サイトカインのインターロイキン六・八(IL-6,IL-8)および腫瘍壊死因子α(TLR5より)またはIL-1βとIL-18の産生を誘導して免疫を活性化しています。これらが免疫細胞を患部に呼び寄せるために急性炎症を生じさせることや血流の変化による大腸内での酸素濃度の上昇やSOSに応じてやって来た好中球などによる活性酸素種の産生は許容範囲とされています。しかしやはりエネルギー源がタンパク質や脂肪に変わると腸内環境の酸性化や腸粘膜のバリア機能低下、ゾヌリンとイプシロン毒素の働きによるリーキーガットに乗じて酸素に高い耐性を持つフラジリス種は悪玉菌やサルモネラ菌を養うことになり、またフラジェリン刺激によって誘導されるべきT細胞の抑制因子(SOCS-1)が働かなくなり炎症反応が持続して下痢、便秘、慢性炎症及び炎症性腸症候群や大腸ガンを引き起こしたり、バクテロイデス・ジンジバリス種が作り出したリポ多糖(LPS)と共にフラジェリンも腸から漏れ出して血流に乗り、リポ多糖は口腔内へ移動して歯周病を引き起こし、フラジェリンは敗血症や腹膜炎を引き起したりします。
※エストロゲンおよびエストラジオールによる胆汁うっ滞のメカニズム
エストロゲンは胃酸を分泌する細胞から中性脂肪を消費して生成され、肝臓ではLDL受容体(悪玉コレステロールを取り込む受容体)を増やして血液中のLDLを減らす働きをしたり、糖質の多い食事を摂った時には肝臓での脂肪合成を抑制しつつ分解を促して善玉コレステロール(=短鎖脂肪酸)の生成を促し、脂肪が多い食事を摂った時には脂肪の取り込みおよび消費を促したりして脂肪の蓄積を抑制します。さらに免疫細胞(Treg細胞)を増やして肝炎を予防する働きもあります。が一方で肝臓の血液凝固因子の合成を促進して血栓症や動脈硬化のリスクを高めたり肝機能を低下させる作用も持っています。肝硬変や肝不全によってエストロゲンの分解能力が低下すると再活性されて血中に再循環し、血管拡張を引き起こしたり(くも状血管腫や手掌紅斑の原因)、肝細胞膜から分泌される胆汁酸や有機陰イオンを運ぶ輸送体の働きを阻害して胆汁の生成量を減らしたり、胆汁中のコレステロール濃度を高めて流れを悪くしたり、胆石に変化させたりといった悪影響を及ぼすようになります。これが胆汁うっ滞であり、その症状は黄疸(胆汁の色素物質であるビリルビンが血液中に漏れ出して皮膚や白目が黄色くなる。これは尿に混ざると色が濃くなり、便に含まれないと白くなります)、皮膚のかゆみ(胆汁の成分にかゆみを引き起こす作用がある)、脂肪の消化吸収が滞って脂肪便や下痢、胃もたれを引き起こすなどで、重症化すると急性胆管炎(胆管内の圧力上昇や細菌の逆流により発熱、悪寒、みぞおちの痛みが生じる)、ビタミン欠乏(脂溶性ビタミンのA、D、E、Kの吸収不良による様々な欠乏症や新生児の発達不全、カルシウムの吸収不良による骨組織の減少、体内の毒素が排泄されずに肝不全を起こします。
ちなみに肝臓に蓄積したエストロゲンを再活性する酵素がβ-グルクロニダーゼでこれを生成する細菌群を「エストロボローム」と呼びます。95%の種類(菌株)の大腸菌(シトロバクター属やクレブシエラ属、エンテロバクター属など)、一部のサルモネラ菌、一部の赤痢菌、一部のエルシニア、日和見菌のクロストリディウムゾ属、エウバクテリウム属、バクテロイデス属、そして善玉菌のラクトバチルス属が含まれ、エストロゲンの再吸収を抑制して排出を促すのはラクトバチルス属で、酵素は作りませんが腸内フローラの多様性を維持する働きによってビフィズス菌も含まれています。腸内フローラの多様性が低下するとエストロゲンの排出が減り、ホルモンバランスが崩れると月経痛の悪化、月経不順、子宮内膜症、乳がん、子宮頸がん、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)更年期症状(ホットフラッシュ、イライラ)の悪化、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、細菌性膣症、肥満、むくみを発症し、アルコールに酔いやすく中毒になりやすくもなります。男性で肝臓内エストロゲン量が増えるとホルモンバランスの乱れから気分の落ち込み、疲労感、むくみ、女性化乳房が生じます。
この対策は腸内環境を整えることと胆汁の流れを良くするために苦い食べ物(カカオ、ビターチョコレート、レバー、海藻、ゴーヤー、フキノトウ、コーヒーなど)、ビタミンCとE(家庭薬膳の考え方では酸味が胆に良い、緑黄色野菜、果物)、適度な水分摂取(一日1.5ℓ以上)、そして大豆イソフラボンの長期摂取によりエクオールを腸内に定着させることです。
エクオールは複数種存在する大豆イソフラボンの中で「ダイゼイン」という種が腸内細菌のアドレクルーツィア属、エガセラ属、ステッキア属、乳酸菌のラクトコッカスを含む十五種が確認されており、これらエクオール産生菌がダイゼインを食べて代謝し、ジヒドロダイゼインを経て作られるのがエクオール。大豆製品を日常的に摂取している人の腸内に定着し、日本人、中国人、台湾人の五〇パーセント強がこの菌を保有していますが欧米型の食事を好む若者と欧米人、オーストラリア人は約三割の人しかエクオールを作れません。しかしエストロゲンの受容体に結合してエストロゲンに似た働きをし、体内にエストロゲンが少ない時には補い、多い時にはその働きを抑えることで女性ホルモンのバランスを整える働きがあります。したがってまず抗エストロゲン作用によって乳がん予防、抗アンドロゲン作用(DHT/ジヒドロテストステロンと結合することでこれがアンドロゲン受容体に結合するのを妨げる)によって前立腺肥大及びがんの予防と脱毛改善効果が期待できます。さらにコラーゲンの生成によるしわ改善、三カ月摂取による首と肩のコリ軽減、閉経後の骨粗鬆症の予防(女性は閉経直後から年2%ずつ骨密度が減少するがエクオールがあると年1.1%に抑えられる)、悪玉コレステロールを減らしてメタボリックシンドローム(高血圧、高コレステロール、高血糖をもつ肥満)や動脈硬化を予防するなどの効果もあります。しかもエクオールの活性はエストロゲンの百分の一から千分の一と非常に弱く、基本的に副作用がなく、摂取してもエストロゲンの過剰にはつながらないという強みがあります。
腸内細菌と胆汁酸の関係は深く、一部の菌は病原性細菌を排除して自身の増殖しやすい環境を守るための武器として生成し、それが眠っている遺伝子を目覚めさせて一段上の健康効果をもたらすことが分かっています。その物質は二次胆汁酸と呼ばれ、肝臓でコレステロールから合成された一次胆汁酸が腸内細菌によって分解されて作られます。
詳しいプロセスは、一次胆汁酸(コール酸やケノデオキシコール酸)がアミノ酸(タウリン、グリシン)と結合した抱合体として十二指腸へ分泌され、そのほとんどは小腸で吸収されますが、一部は大腸まで到達し、そこのクロストリジウム属やユーバクテリウム属の一部やルミノコッカス属が生成する酵素(7a-デヒドロキシラーゼなど)によってデオキシコール酸(DCA)やリトコール酸(LCA)に変換されます。これらが二次胆汁酸で、GLP-1(グルカゴン様ペプチド)の分泌を促してリパーゼの働きを高めることで中性脂肪の吸収を促進する、ペプチドYY(PYY)の分泌を促して血糖値を調節する、腸管内のT細胞に作用してその分化(他の免疫細胞への変換)を助けることで腸内免疫システムの恒常性を保つ(これは短鎖脂肪酸やトリプトファン代謝産物と並んで腸内免疫システムを維持する要の存在である)、病原性の細菌を排除して自身のニッチを守ることで腸内フローラのバランス維持に貢献するなどの働きがある一方で疎水性が高い(水になじみにくい)性質ゆえに同じく脂質でできている細胞膜に付着・蓄積しやすく、膜の構造変化、細胞機能の低下、組織の損傷から炎症反応を誘発してしまったり、それがDNA(細胞核)にまで達して大腸がんの発症リスクを高めてしまったり(これには二次胆汁酸に耐性がある大腸菌やサルモネラ菌の増殖も関与している可能性があります)、ミトコンドリアによる正常なエネルギー代謝を阻害して活性酸素の過剰生成をもたらしてしまったり、さらにその活性酸素によって酸化して過酸化脂質として細胞に二次被害的な炎症やアポトーシスをもたらしたり、疎水性物質と結合して細胞内に侵入してきたタンパク質が防御システムを破壊して炎症反応を引き起こす、そしてこれらの混乱により細胞に慢性的なストレス(=慢性炎症)を与えるなどの弊害もあり、そのために二次胆汁酸は有害物質と評価されています。
※ルミノコッカス属菌とクルクミンやカテキンなどのポリフェノールは二次胆汁酸の生成を抑制する。乳酸菌は二次胆汁酸を生成しない。
しかしウルソデオキシコール酸(UDCA)という種類の二次胆汁酸は肝機能改善薬やコレステロール胆石症の治療薬として利用されていますし、慶応義塾大学の研究によれば二次胆汁酸がさらに代謝されることで生成されるイソアロリトコロール酸(isoLCA)は百歳を超える長寿者の腸内に多く見られ極めて低濃度で病原性細菌の増殖を抑え、かつTreg細胞の分化を促進して抗炎症作用を発揮することが明らかにされています。
イソアロリトコロール酸の生成は複数の放線菌門(アクチノマイセス門)の腸内細菌が接触することで通常は眠っている遺伝子が活性化して誘導され、具体的にはリトコール酸をバクテロイデス属が生成する3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素(3β-HSDH)や類似の関連酵素の作用で3-オキシソリトコール酸(3-oxoLCA、オキソ基)に変換され、さらにそれが5a-還元酵素に相同性を持つ3-オキソ-5a-ステロイド-Δ⁴-デヒドロゲナーゼを持つオドリバクター属(バクテロイデス門)やパラバクテロイデス属、そして3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素(3β-HSDH)によってオキソ基を還元するコリネバクテリウム属(細胞壁にミコール酸を含むグルタミン酸産生菌)やエガセラ属やクロストリディウム属、バクテロイデス属、アドレクルーツィア属、ビフィドバクテリウム属(ビフィズス菌)、コリンセラ属などの働きで最終的に生成されます。したがってバクテロイデス属の割合が多いタイプBの食生活及び腸内環境はイソアロリトコロール酸の産生に有利だと言えます。ちなみに外部からの働きかけでは無菌マウスにオドリバクター属菌を投与するだけでイソアロリトコロール酸が合成されます。
※トリプトファン代謝産物の働き―――三つの代謝経路があり、通常はセロトニン経路でセロトニンとメラトニンに変換されて脳内の精神安定や睡眠を助け、一部はインドール経路にてインドール、インドール-3-酢酸、インドール-3-プロピオン酸に代謝されて抑制性の効果を発揮しています。
・インドール―――セロトニンやメラトニンに含まれ、大便臭のにおい物質を持つがオレンジやジャスミンのにおい成分でもあり非常に低濃度の場合には花のようなにおいを発する、コールタールにも含まれる、病原菌の遺伝子発現を抑制して増殖を阻止する、腸管の透過性を適切に保って抗炎症性作用、サイトカインIL-22の産生を誘導して腸粘膜の免疫応答を強化する、腸内分泌L細胞からのGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)の分泌を促進しインスリンの分泌をもたらす、血液脳関門を通過して脳内の炎症を抑制したり神経新生を促進したりする、肝臓でインドキシル硫酸という尿毒素に変換されて排泄される。ただし高濃度になると腎毒性や心血管毒性をもたらす、芳香族炭化水素受容体(AhR)に強く作用すると肺高血圧症(PAH)の原因になります。
※芳香族炭化水素受容体はダイオキシンなどの環境汚染物質や多糖芳香族炭化水素(PAHs)と結合してその遺伝子の発現を抑制することで免疫調整を行ったり皮膚のバリア機能を強化したり、肝臓や腸管、乳腺などの細胞の分化や成熟に関与したりしていますが、抑制しているIL-24やIL-33などの炎症性サイトカインが強くなって機能が低下すると皮膚のバリア機能強化に携わるフィラグリンやロリクリンという物質が減少してアトピー性皮膚炎を発症したり、ダイオキシンによる奇形や内分泌かく乱作用や乾癬、皮膚がんの発症及び進行をもたらします。
・インドール-3-酢酸―――破骨細胞の形成を抑制して骨粗鬆症を予防、緑内障で起こる神経の炎症や変性を抑止する、急性胆汁うっ滞性肝障害から肝臓を保護する、HeLa細胞などの増殖促進、植物の生育に必須の植物ホルモン、胃がんや食道がんなど消化器系のがんの増殖に関わる。
・インドール-3-プロピオン酸―――食物繊維が豊富な食事で増殖、破骨細胞を抑制して肥満関連骨粗鬆症予防、高脂肪食による代謝性疾患(肝疾患、脂肪肝)を改善する、高脂肪食誘発性肥満の改善、糖尿病網膜症の予防、乾癬の改善、植物の発根促進、細胞伸長促進などをもたらし、不足すると精神疾患、免疫疾患、炎症性腸疾患、大腸がん、肝疾患、糖尿病をもたらすことが知られています。
※HeLa細胞はヒト子宮頸がん由来の細胞ですので膣内環境の悪化によって活性化し、テロメラーゼ(テロメアを維持する酵素)がずっと活性しているので細胞分裂の限界(ヘイフリック限界)を超えて無限に増殖することができます。この能力はヒトパペローマウイルス(HPV、のE7タンパク質)がHeLa細胞の細胞周期の停止に関わるたんぱく質に結合することで発現し、四、五日の間に十倍から二十倍に増えることも珍しくないそうです。
しかしトリプトファンの過剰摂取(一日3~6g)あるいは脳内で慢性的な炎症やアミロイドβの蓄積などが起こると体は炎症の抑制や異物の排除のためにインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO1)という酵素を分泌してキヌレニン経路を起動し、細胞毒性の発現及び抑制する物質をセットで生成します。
・3-ヒドロキシキヌレン酸―――水晶体に存在して紫外線を吸収することで目を守る、炎症性サイトカインのIL-6の生成を抑制して免疫反応を調節、NAD+の前駆体を生成して細胞のエネルギー生成に貢献/(キヌレン酸:)脳内でグルタミン酸の神経毒性を抑制して神経を保護する、トリプトファン自身の細胞毒性も抑制する、ただしアセチルコリン神経伝達の抑制が過剰になると統合失調症の認知記憶障害やアルツハイマー病を引き起こします。
・3-ヒドロキシアントラニル酸(3-HAA)―――キノリン酸の前駆物質で通常は免疫応答によってアミロイドβの蓄積を抑制したり、シナバリン酸の分泌によってグルタミン酸及びその興奮毒性を抑制していますが、3-ヒドロキシアントラニル酸-3,4-ジオキシゲナーゼ(3-HAO)による代謝によってキノリン酸が、3-ヒドロキシアントラニル酸オキシダーゼ(3-HAO?)による代謝によって細胞毒性を持つ2-アミノ-3-カルボキシムロン酸セミアルデヒド(ACMS)も同時に生成しており、さらに自動酸化(中性のpH値)されるとスーパーオキシドラジカルと過酸化水素が生成され、鉄と結合してヒドロキシラジカルが生成されたり、シナバリン酸が3-HAAより十倍高いアポトーシス誘導能力を発動したりします。その結果、
・キノリン酸―――グルタミン酸の神経毒性を促進して細胞死を招く、脳内の炎症時にミクログリアから生成され、ミクログリアを常に攻撃モードにすることで神経炎症の悪化によるアルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、HIV関連認知症などの神経変性疾患を引き起こす。キヌレニン経路が活性化するとセロトニンの生成が減り、それが長期間に及ぶとキノリン酸の脳内での蓄積につながるそうです。
・キヌレニン―――神経毒性によってT細胞やナチュラルキラー細胞(NK細胞)などの免疫細胞をアポトーシスに導く、および制御性T細胞の分化と増殖を促進することによって免疫応答を抑制するなどの免疫寛容誘導を行う。
・・・・ちなみにインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO1)という酵素はトリプトファンをキヌレニンに分解することで免疫細胞の暴走を防ぐ免疫調節システムを制御していますが、多くのがん細胞はこの仕組みを利用してIDO1を過剰に発現させることで増殖にトリプトファンを必要とするT細胞を飢餓状態に陥れて免疫細胞からの攻撃を回避します。
・タイプCは炭水化物過多の偏った食生活によって作られた腸内フローラで善玉菌と日和見菌の多様性は低いですが、病気のリスクはタイプA・Dより低いです。
・タイプDは欧米型の食生活でタンパク質、脂質、糖質の摂取量が多くビフィズス菌の割合が高くなっています。これが善玉菌を増やしすぎた状態でタイプEと比べて炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)のリスクが二十七倍、糖尿病リスクが十三倍、心血管疾患のリスクが九倍高まります。
株式会社サイキンソーが自社の腸内フローラ検査サービス「マイキンソー」の利用者の腸内フローラデータ分析と2,387名のお母さんに行ったアンケートによればビフィズス菌の保有率は2~6%が適切でそれ以上でもそれ以下でも腸内フローラの多様性が低下して睡眠の質や精神状態に問題が生じることを明らかにしています。そして結論としてビフィズス菌過剰による疾患は乳酸菌の過剰生産により代謝異常が生じていることが原因と分析しています。補足すると乳酸菌が過剰に生産されるのは乳酸菌を生成するタイプの善玉菌ばかりが増殖しているからで善玉菌内での多様性を高めるには摂取する食物繊維やオリゴ糖の種類を増やさなくてはならないそうです。例えば同じ銘柄のヨーグルトばかり食べるのではなくたまには別の菌が入った物を選ぶとかオリゴ糖の摂取候補に玉ねぎやニンニク、アスパラガス、バナナがあることを知るとか、レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)を含む冷やご飯やポテトサラダやバナナを食べるとか考えながら食べるものを選ぶことが大切で理想としては週に三十種類以上の植物性食品を食べると良いようです。
ちなみにダイエットや健康増進のために納豆や塩糀(しおこうじ)を積極的に摂る人がありますが、納豆菌もこうじ菌も好気性菌で腸内の酸素を消費することで腸内の酸素レベルを下げる働きをするので悪玉菌優位の環境を改善する効果を期待でき、特に納豆菌は病原性大腸菌O-157の増殖を抑制するほど強力です。胃酸にも強く生きたまま腸に届いてでんぷんを分解し、オリゴ糖を生成して善玉菌を養うほか、ナットウキナーゼはたんぱく質分解酵素の働きと血栓を溶かして動脈硬化を予防する働きを持っています。こうじ菌(コウジカビ)も腸内バリア機能を保つムチンを増加させるほか、アミラーゼとプロテアーゼを生成することででんぷんとタンパク質の分解を助け、オリゴ糖も生成します。
・タイプEは魚と野菜中心のバランスの取れた食生活によって作られた腸内フローラで最も健康的な状態と評価されています。特にこのタイプでのみ増殖が確認できるプレボテラ菌はお米を長期的な食べている人の腸内に定着する日和見菌ですがアジア人でも20~30%の人にしか保菌していないようです。嫌気性菌の中でも特に酸素に弱く、空気に触れさせると10~30分で死滅してしまいます。つうじょうは炭水化物や食物繊維をエサとして善玉菌と同じような働きをしていますが、例によって腸内環境が悪化すると一部の菌種が口腔内で歯周病を引き起こしたり膣内で膣炎を引き起こしたり、心血管疾患リスを高めるトリメチルアミンNオキシド(TMAO)の生成に関与したりします。・・・これだけで「最も健康的」と評価するのは根拠に乏しいように思えますが日和見菌の割合が高く、かつルミノコッカス属が少ないこと、そして腸内に余剰の酸素(すなわち炎症)をもたらさないことが健康維持の条件として強いのかもしれません。魚をたくさん食べることとプレボテラ菌のシェア拡大の関連もはっきりせず、酪酸酸性菌やビフィズス菌、乳酸菌、アッカーマンシアなどの善玉菌が良質なたんぱく質やオメガ3脂肪酸をエネルギーとして増殖し、さらに抗炎症作用に利用しているようです。・・・良質なたんぱく質とは白身魚や白身肉を指し、スケソウダラ、カレイ、ヒラメ、スズキ、鯛、甘鯛、鶏むね肉、鶏ささみなどが含まれますが、アミノ酸スコアが100に近く、必須アミノ酸をバランスよく含んでいること、他の栄養素(ビタミン群やD、ミネラル)も豊富でカルシウムの吸収やエネルギーおよび脂質代謝を助けること、高タンパク質食品であるにもかかわらず脂肪分が非常に少ないこと(マダラの場合100g中0.2g)、筋線維が細く、筋基質たんぱく質(コラーゲン)が少ないために胃腸への負担が少なくトレーニング後や高齢者や病人など腸の働きが弱っている時の栄養摂取に適していることなどからそう呼ばれています。加えてタンパク質は未消化のまま大腸まで運ばれてしまうと悪玉菌によって腐敗されてアンモニアや硫化水素を作られてしまいますが、消化が良い白身肉ならそれを防ぐことができます。乳酸菌などは分解されたたんぱく質やアミノ酸の一部を利用して腸内環境を弱酸性~中性(pH6.0~7.5)に保っています。ちなみにこれが酸性に傾くと下痢になり、アルカリ性に傾くと便秘になる(便の色が黒っぽくなる)そうです。
ちなみにフィーカリバクテリウム属は全てのタイプで平均的に支配地(5%以上)を確保している嫌気性、非運動性のグラム陽性菌です。食物繊維を発酵して酪酸菌を生成し、抗炎症作用、、抗がん作用、腸のバリア機能改善、免疫バランスの調整、インスリン抵抗性の改善、血糖値を下げる作用など長寿に貢献する一通りの効能を持っています。したがって増えすぎると乾癬(かんせん)になりやすくなり、不足するとクローン病、肥満、気管支喘息、大うつ病性障害(MDD=うつ病)を発症しやすくなります。
―――以上のことから腸内フローラにおいて日和見菌の重要性を理解していただけたと思いますのでここに腸活の概念の転換を宣言します。このことを踏まえて他の細菌を見ていきましょう。
《腸内フローラを構成している細菌種》
善玉菌―――ビフィズス菌、乳酸菌、ラクトバチルス菌など。
悪玉菌―――ウェルシュ菌、ブドウ球菌、有毒株の大腸菌など。
日和見菌―――バクテロイデス、非病原性大腸菌、連鎖球菌など。全五百~一千種、百万兆~一千兆個。
ウェルシュ菌は嫌気性桿菌で海、河川、下水、土壌そして動物の腸内に広く分布している細菌で食中毒の原因となるほかタンパク質分解酵素の働きをするなど十二種の毒素を作り出すことが知られています。
エンテロトキシン―――ウェルシュ菌食中毒の主な原因。牛、鶏、魚が保菌していることが多く、熱(六十度で十分)や酸(pH4以下)や酸素に弱く加熱すれば殺すことができるが、煮込み料理を二時間以上常温(二十から五十度)に放置すると生き残りが増殖することがあり、耐熱性の芽胞を発芽すると百度で六時間加熱しても死ななくなる。対策としては加熱調理後三時間以内に二十度以下に急冷する、または小分けにしてよく空気に触れさせるなど。
α毒素(アルファ)―――全てのウェルシュ菌が産生するレシチナーゼという毒素で細胞膜を破壊し、組織の壊死や溶血を引き起こす。食中毒で腹痛と下痢を起こす主犯、またガス壊疽の原因。
β毒素(ベータ)―――腸管壊死性出血性腸炎と羊の赤痢の原因になる。
ε毒素(イプシロン)―――腸管の透過性を高め、水分の吸収を妨げる。リーキーガットも助ける。
ι毒素(イオタ)―――細胞のイオンチャネルを標的として腸管に炎症や損傷を引き起こす。
κ毒素(カッパ)―――コラゲナーゼを生成してコラーゲンを分解し、組織の壊死を促進する。
μ毒素(ミュー)とν(ニュー)毒素―――プロテアーゼを生成してタンパク質を分解する。タンパク質食を増やすと腸内が悪玉化する原因。ちなみに善玉菌の主なエサは炭水化物(糖質)と食物繊維とオリゴ糖であり、脂肪とタンパク質と糖質は基本的に悪玉菌の餌である。
H毒素(エイチ)―――ヒアルロニダーゼを生成してヒアルロン酸を分解して組織の拡散を促進する。
※
《口内フローラを構成している細菌》
善玉菌―――乳酸菌、ビフィズス菌、ロイテリ菌
悪玉菌―――ミュータンス菌(虫歯菌)、歯周病菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス菌、トレポネーマ・デンティーラ菌など)、ストレプトコッカス・ソブリヌス(ミュータンス菌より有病率が高い虫歯菌)
日和見菌―――唾液連鎖球菌(舌表面の再優勢菌)、肺炎球菌、ブドウ球菌、大腸菌など。
「乳児の口内フローラ」
生まれた直後はほぼ無菌状態、あるいは産道で口に入れてしまった菌が母親由来の膣内細菌をもって生まれ、唾液の分泌と共に初期定着菌で満たされる。
善玉菌―――ストレプトコッカス・ミティス菌(口腔連鎖球菌群、唾液、頬粘膜、歯牙表面に含まれる)、ナイセリア属
悪玉菌―――ベイロネラ属
日和見菌―――ブドウ球菌属、コリネバクテリウム属
母乳由来菌―――ビフィズス菌、乳酸菌
最初の歯が生える頃―――アクチノマイセス属、ラクトバチルス属(乳酸菌)、フソバクテリウム属
乳幼児の場合、口腔内で善玉菌が多い時には腸内フローラの多様性が高く、悪玉菌や虫歯菌が多い時には腸内フローラの多様性が低くなります。
生後数カ月から周りの大人たちの唾液や皮膚接触、住環境からの被ばくによって菌の種類が爆発的に増加し、さらに離乳食の開始によって成人の口内フローラの五~七割が形成され、健全な口内フローラの細菌バランスは腸内と同じく善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7です。虫歯菌や歯周病菌の初侵入は母親などからで、バイオフィルムで守られている歯周病菌は胃で殺菌されずに腸へ行き着いて腸内環境をを乱します。そうして腸粘膜のバリアが破壊されたり透過性を高められたりすると血流にのって再び口内に戻ってきて歯周病を引き起こしたり、各臓器で心臓病や肺炎、胃潰瘍、胃がん、脳梗塞、全身の炎症、感染病のかかりやすさ、糖尿病、早産、低体重児出産などを起こすリスクを高めます。
※アクチノマイセス菌―――プラーク(歯垢)を構成する細菌で乳歯が生え始めてから定着し、糖を分解して酸を作り出し、歯を溶かします。母乳しか飲んでいない場合でも含まれる乳糖がが悪玉菌の餌になるためプラークが発生してしまいます。特に唾液の分泌が少なくなる夜間に授乳するとプラークが溜まりやすくなります。食後四時間から八時間後にプラークが形成され、二、三日放置すると歯石化が始まり、二週間で歯石になるといわれています。さらに離乳食が始まって砂糖を摂取し始めるとより口腔内環境が悪化しやすくなり、かつ小児期の唾液はカルシウム濃度が高く緩衝力が低いため、細菌によるプラークの石灰化が進行しやすいそうです。
口腔内フローラの悪化が進行すると歯周病菌が毒素を出して歯茎に炎症を起こし、歯周ポケットにアクチノマイセス菌が入り込み、酸素のない場所まで潜り込んで増殖、慢性的な化膿性肉芽腫性疾患(放線菌症)を引き起こします。この病には複数の型があって頸部顔面型はアゴと首に、胸部型は菌塊の誤嚥が原因で肺に、腹部型は消化管(虫垂や憩室)の亀裂に、骨盤型は子宮に慢性の化膿性肉芽腫ができる他、副鼻腔も好発部位とされ、舌、肺、腸管に発症する時には急性虫垂炎、消化性潰瘍、腸憩室穿孔(ちょうけいしつせんこう)に併発して現れれます。(治療はペニシリン系その他の抗性物質。ちなみに放線菌のストレプトマイセス属は抗性物質産生菌の大部分が属し、ストレプトマイシンやカナマイシン、テトラサイクリン、エリスロマイシン、リファンピシン、ブレオマイシン、バンコマイシンなどを生成するので腸内環境が正常なら抗性物質で治る病気にはならない)
※フソバクテリウム―――これもヒトの口腔内、消化管、女性生殖器に常在し、入試が生え始める生後六カ月頃から母親からの感染で検出され始めます。通常は無害ですが、抵抗力が低下したり傷口から体内に侵入した時時には感染症を引き起こします。乳幼児は主に頭頸部に症状が現れ、急性中耳炎、乳突洞炎(中耳炎から進行して耳の後ろの骨/乳突洞に炎症が及んだもの)、高熱(三十八、九度)、首の腫れや痛み、、機嫌の悪さ、意識レベルの低下、痙攣、全身症状としてのルミエール症候群(敗血症、骨髄炎、脳膿瘍、肺塞栓などを合併)などを発症することがあります。さらに喫煙や飲酒によって増えるフソバクテリウム・ヌクレアタムは歯周病と大腸がんのリスクを高め、フソバクテリウム・バリウムは腸内、創傷部、副鼻腔、腹膜炎などに関与します。
※コリネバクテリウム属―――虫歯が象牙質まで進行したとき歯髄(神経)に入り込み、歯髄の滲出液を栄養に増殖し、それから血流に乗って肺(肺炎、喘息)や心臓(心内膜炎)、脳、脊髄などへ移動して様々な病気を引き起こします。除去は困難で殺菌剤への抵抗性も高い。
※ラクトバチルス菌は産道を通る時に母体からもらったものと母乳に含まれているものを摂取して腸への定着を試みますが、生まれ立ての赤ちゃんの腸内にはわずかに酸素が含まれているため大腸菌やブドウ球菌などがまず増殖して腸内の酸素を使い切ることを目指します。したがってその間の善玉菌の補給手段、免疫力の維持手段として母乳が必要なのです。生後数日から一カ月までの間に母乳由来のビフィズス菌が急増して腸内フローラの基礎が形成され、その後ラクトバチルス菌が活動を始め、生後六カ月~三歳までの「感染の窓」と呼ばれる時期に外部から入ってくるさまざまな菌に対処し、免疫を獲得及び強化しながら成人の腸内環境を作り上げていきます。大阪大学大学院医学研究科松永倫子さんが参加した研究グループがスイスの国際学会誌『Microorganisms』に発表した研究(2023年9月6日)によれば三、四歳の時期に前頭前野が発達する過程で感情のコントロールが難しい子どもの腸内ではアクチノマイセス属とサラセノ属が増殖しており、腸内で炎症が起こっていることが示されました。
※ロイテリ菌―――哺乳類や鳥類の消化管に生息している乳酸桿菌の一種でヒトの口から胃、小腸、大腸まで全ての消化管に定着している。ロイテリンという抗菌剤を分泌して悪玉菌と戦う。プロバイオティクスとして摂取すると乳児疝痛(せんつう、乳児の夜泣きや長泣きの原因の一つ)と下痢や便秘を含む機能性胃腸疾患の改善、ピロリ菌や虫歯菌、歯周病菌の発育抑制、口臭予防、起床時の口の中のねばねば予防、アトピーやアレルギーの改善、便通改善、妊婦の産道の菌質改善、母乳内のアレルギー原因物質の減少など効果を期待できる。また新型コロナウイルスの抗体価を上昇させる。摂取方法はロイテリ菌タブレットやロイテリ菌配合のヨーグルトを夜の歯磨き後に三十分待って摂取し、口の中全体に行き渡らせるようにして就寝する。胃酸や胆汁に強い菌ですが定着には時間がかかるので一カ月以上継続する。注意点としては殺菌作用のある歯磨き粉や洗口剤を使わないことが推奨されています。特にラウリル硫酸ナトリウムはシャンプーにも配合されている成分で強力な洗浄力と脱脂力で口内や髪や頭皮を乾燥させ、歯の再石灰化を妨げたり善玉菌を壊滅させますので避けるべきです。
※
《喉フローラを構成している細菌》
数百種類の細菌で構成されており、主にフィルミクテス門(乳酸菌/プラズマ菌、R-1菌など、ウェルシュ菌、酪酸菌、枯草菌、ブドウ球菌、連鎖球菌/ストレプトコッカス)、フソバクテリウム門、バクテロイデス門、プロテオバクテリア門(大腸菌、サルモネラ菌、緑膿菌、ビブリオ菌/コレラ菌、根粒菌など)、アクチノバクテリア門がシェアを占めている。
ストレプトコッカス属は呼吸によるエネルギー生産を行わず、酸素があってもなくても乳酸発酵によってエネルギーを得る。
「日和見菌」
A群β溶血性連鎖球菌(日本語の通称は溶連菌)―――子どもに多く見られ、のどの痛み、発熱、イチゴ舌を引き起こし、放置するとリウマチ熱や急性糸球体腎炎などの合併症につながる可能性あり。
肺炎球菌―――肺炎や中耳炎、のどの感染症の原因菌。
ヘモフィルス・インフルエンザ菌―――インフルエンザウイルスとは異なるが口腔内に常在する小児期感染症の原因菌。感染防御機構が局所的に低下した時に活性化して気道・呼吸器感染症、鼻炎、副鼻腔炎、化膿性中耳炎、化膿性髄膜炎(首の硬直、意識障害、けいれん、頭痛、発熱)、化膿性関節炎、肺炎、気管支炎、結膜炎、咽頭蓋炎、菌血症、敗血症(白血球の増加、発熱、脱力、呼吸数および心拍数の増加)などを引き起こす。発症は突発的で潜伏期間不明、上気道炎や中耳炎に伴って発症することがある。
黄色ブドウ球菌―――皮膚や粘膜に常在し、抵抗力が落ちた時にのどの炎症や膿栓(匂い玉)をもたらす。匂い玉は細菌やリンパ球や白血球およびその死骸、食べかす、鼻水、炭酸カルシウム、コレステロールなどが扁桃のくぼみ溜まり、石灰化して白い球状になったもので口臭の原因になるだけでなく潰すとガスと共に嫌なにおいを発する。匂いの原因物質は硫化水素(腐った卵のにおい)、メチルメルカプタン(キャベツが腐った匂い)、ジメチルサルファイド(硫黄臭)。口の中が不衛生な人や口呼吸の人、唾液が少ない人(ドライマウス、喫煙者、加齢、ストレス、薬の副作用)、肉や乳製品をよく食べる人、鼻炎持ちの人、扁桃炎を繰り返す人などで形成されやすい。
《頭皮フローラを構成している細菌》
善玉菌―――表皮ブドウ球菌(皮膚の常在菌の代表格で他の有害細菌の繁殖を防ぐことで皮膚のバリア機能を保つ)
悪玉菌―――黄色ブドウ球菌(健康な肌にも常在しているが、皮脂の増加あるいは乾燥、免疫力の低下などで悪玉菌が優勢になると炎症や頭皮にきび、ふけ、かゆみ、匂いを引き起こし、またバイオフィルムという膜を形成して洗浄成分の浸透を妨げることで炎症性サイトカインによる皮膚のバリア機能の破壊をもたらす。さらに爪を立てて頭を洗う、指のひび割れなど、虫刺され、火傷などによって傷口から体内へ菌が侵入するとこの菌が作り出す溶血素という毒素によって別の場所で膿を伴う皮膚感染症や食中毒を押したり、血液内で赤血球を破壊し、白血球の貪食作用を阻害して細胞の壊死性損傷や肺炎、敗血症、髄膜炎、心内膜炎、毒素性ショック症候群、熱傷様皮膚症候群などを発症する。あるいは糖尿病やアトピー性皮膚炎を持っている場合に蜂窩織炎/ほうかしきえんという発熱や倦怠感を伴うすねや手の甲の腫れを起こすことがある)
日和見菌―――アクネ菌、コリネバクテリウム属、エンテロコッカス属、マラセチア菌
これらの細菌は頭皮の皮脂や汗だけでなくシャンプーやコンディショナーのすすぎ残しもエサとしており、これらの分解によって生成される遊離脂肪酸(短鎖脂肪酸)の量が頭皮の健康を左右します。その働きは天然の保湿剤として髪と頭皮を乾燥から守る、さらに紫外線からも守る、18-MEA(メチルエイコサン酸)という必須脂肪酸は髪のキューティクル(外皮)を構成して保護する、肺炎球菌の増殖を抑制するなどです。体全体では脂質や糖質の摂取によって肝臓に蓄積された中性脂肪が空腹時や運動時にインスリンの働きによって脂肪細胞から分解されると発生し、アルブミンと結合して筋肉や肝臓でエネルギーとして利用されます。あるいは筋トレによって分泌されるアドレナリンや成長ホルモンもリパーゼの合成を促進して中性脂肪を分解します。が運動不足や過食によって過剰になると遊離脂肪酸はインスリン抵抗性を高めて肝臓や筋肉での糖の利用を阻害して血糖値の上昇や糖尿病の発症、脂質異常症、動脈硬化を誘発するほか、頭皮で臭いやかゆみを起こします。さらに過剰な皮脂が毛穴に詰まったり紫外線によって酸化して過酸化脂質に変化したりすると炎症やふけ、抜け毛が起こります。(白髪を伴う抜け毛はコリネバクテリウム属の増殖による慢性炎症が原因。この細菌はまた皮脂や汗の分解により匂い物質を生成する)
通常の抜け毛は髪の成長が止まる休止期に下から新しく生えてくる髪の毛に押し出されたときに起こります。髪の成長期は二~六年、その後二週間前後の退行期を経て三カ月前後の休止期に入ります。それぞれの割合は成長期の髪が九十パーセントで退行期と休止期の髪は五パーセントずつです。毛母細胞が死滅する原因は頭部に縫合手術が必要な大けがや火傷を負った時のみといわれ、抜け毛が増えても薄毛になっても適切に栄養や酸素を送れば再び髪の毛は生えてきます。ただしスキンヘッドの人のように毛穴が完全に塞がってしまった時や男性型脱毛症(AGA)により毛母細胞の活動が低下して休止期に入ってしまった場合には生えてきません。また過剰な皮脂やふけによる毛穴の詰まりやストレス/交感神経により毛細血管が収縮して頭皮の血流が悪くなって必要な栄養が届かなくなると成長期が短くなり、髪が十分に太くならず抜けやすくなります。
さらに見落としがちなのが頭皮の冷えで、手足に冷えがある人は頭皮も冷えているそうです。頭皮は神経が少ないので寒さを感じにくいですが実は体感温度を下げて体全体を冷やします。そして寒さ対策として体は血液を中心部に集めて四肢や頭皮の血流を減らしてしまいます。すると抜け毛、薄毛だけでなく頭痛や肩コリ、イライラ、不安、集中力や思考力の低下からの精神疲労、代謝と免疫力の低下、さらには肌の新陳代謝も悪くなって乾燥、かゆみ、頭皮の炎症、髪のパサつき、傷みやすさ、ふけなどが連鎖的に合併することになります。
生理的なふけは皮膚細胞の新陳代謝の結果で目立つことはありませんが、洗浄力の高いシャンプーや冬の乾燥で頭皮が乾燥し、バリア機能が低下すると乾性のふけが大量に出るようになり、また必要な皮脂を失った頭皮に皮脂を補おうと男性ホルモン(テストステロン及びアンドロゲン)が皮脂腺に働きかけて皮脂の過剰分泌を引き起こし、その過剰な皮脂をマラセチア菌がエサにして増殖し、これが生成するリパーゼ(脂肪分解酵素)によって刺激された皮膚が炎症を起こしてニキビやかゆみ(脂漏性皮膚炎)、マラセチア毛包炎、湿疹、脂性のふけ、脂漏性脱毛症(夏場など高温多湿の時期に悪化しやすい)を生じさせます。女性の場合、プロゲステロンの分泌が増加する月経前などに皮脂の分泌量が増え、あるいはアドレナリンも皮脂の分泌を促進します。
・・・マラセチア菌の増殖条件は思春期や体質による皮脂の過剰分泌、汗をかいた状態や髪の毛の生乾き、冬の厚着による高温多湿、ストレスや睡眠不足、食生活の乱れ、糖尿病による免疫力の低下、皮膚のバリア機能の低下、糖質・脂質の過剰摂取、ニコチン・アルコール・カフェインの摂取、免疫を抑えるステロイド外用薬の使用など。
※男性型脱毛症(AGA)はテストステロンより2.5~10倍効果が高いジヒドロテストステロン(DHT)が毛乳頭細胞にあるアンドロゲン受容体と結合することで分泌される脱毛因子(TGF-β)もうぼ細胞の増殖を抑制すると髪の成長期が短くなり(数カ月から一年)、毛包が徐々に小さくなって細く短い髪が増えていきます。薄毛が進みやすい部位は前頭部や頭頂部でテストステロンがジヒドロテストステロンに変換されやすい場所だからです。
DHTは主に前立腺や毛根周辺で生成され、胚発生期における男性生殖器の性分化、思春期における陰茎と陰嚢の成熟、前立腺と精嚢の発達及び修復、筋肉増強や骨格の発達により男らしい体つきを作る、性欲の維持、皮脂の分泌と体毛(顔毛、陰毛を含む)の促進に働く一方で頭髪の成長を抑制します。高脂肪食・高糖質食、飲酒・喫煙、ストレスによるコルチゾール分泌、男子思春期および激しい運動による男性ホルモン分泌、女性は閉経に伴う相対的な男性ホルモン(アンドロゲン)の増加などにより生成量が増加し、睡眠不足と運動不足はその排出を滞らせることで体内の蓄積量を増やします。そうして過剰になると前立腺肥大および前立腺がんのリスクが高まり、側頭部の頭皮が退縮し、男性型脱毛症を発症しやすくなります。(ほぼすべての白人男性は十代に一時的な生え際の後退を経験するそうです)
テストステロンをDHTに変換する5a-還元酵素は胆汁酸の生成、アンドロゲン及びエストロゲンの代謝を担い、その受容体に結合することで肝臓でのコルチゾールの代謝を行います。したがって特に5a-還元酵素2型を過剰に発現させると過剰なコルチゾールによる代謝機能障害関連の脂肪肝疾患(MASLD)を抑制して脂肪の生成を抑制できることが明らかになっています。またDHTの代謝物である3a-アンドロスタンジオールはGABAA受容体を強力に発現させて抗うつ・抗不安・抗ストレス・抗けいれん作用、報酬/快楽作用(腹側被蓋野のドーパミン抑制)、認知促進作用、性行動(GABAが分泌を促すGnRH/ゴナドトロピン放出ホルモンの働きによりオスは巣作り行動、メスはロードシス行動/オスに尻を向けて性交を促す行動を起こす)をもたらします。・・・ただし肥満防止や慢性炎症のストレス緩和などのためにこれらの物質を利用していると体に不毛な競争を強いることになり、競合する物質が脱落したり、これら自身の脱感作が起こると抑制されていた症状が噴き出すことになります。例えばシングルのオスの巣作り行動を社会不参加やひきこもりや縄張り行動と解釈するならば隔離飼育されたマウスは大脳皮質で5a-還元酵素およびその受容体の発現が低下してドーパミン神経の調節不全からの慢性ストレス、不安や攻撃性の昂進、認知機能障害を引き起こし、またプロゲステロンからアログレナノロンへの変換量が減ってうつ病、不安症、統合失調症を発症することが知られています。
一方で5a-還元酵素の阻害やDHTの減少は髪の成長サイクルを改善しつつ毛根への負担を減らして太く健康な髪を取り戻すことができます。また皮脂量のコントロールにより頭皮を始めとする皮膚環境の改善やニキビ、脂漏性脱毛の改善、イライラ軽減につながります。
※ちなみにプロゲステロンからDHTを生成する経路が存在するので女性でもDHTを介したGABA抑制に依存している人はいて、月経前にプロゲステロンが減少することでアロプレグナノロンの恩恵が弱まりPMSやPMDD(月経前不快気分障害)によるイライラ、不安感、気分の落ち込みや月経関連過眠症による強い眠気に悩まされることになります。飲酒による不安軽減、リラックス効果も同様でGABAは脳の神経活動を抑制して「酔い」を作り出しますが、飲酒習慣が長期化すると脳はアルコールによる鎮静作用に対抗して神経活動を昂進させ、酔っても理性を保てるよう調整します。これにより飲酒をやめると過活動になり不安、不眠、手の震え、幻覚やけいれんなどの離脱症状いわゆるアルコール中毒の禁断症状が現れるようになります。アロプレグナノロンの減少は他に産後うつ病や多発性硬化症のうつ症状の原因にもなるようです。
※DHT(ジヒドロテストステロン)を減らす生活習慣―――可能な限り同じ時間に就寝、起床して朝食をしっかり摂る(と言っても午前六時から十時までは消化機能が低下しているので消化しやすいもの。パンよりご飯、ヨーグルトより豆類や鶏肉が良い)、亜鉛はホルモン合成のバランス維持に重要、タンパク質は髪の主成分ケラチンの材料(卵はゆで卵にした方が吸収率が高まる)、鉄分は酸素運搬、ビタミン群(B群およびA、C、E)皮脂の分泌調節および代謝のサポートと抗酸化作用、良質な資質(オメガ3脂肪酸)は抗炎症作用と血行改善とホルモン調節、大豆イソフラボンは女性ホルモン様の作用によりDHTの生成を抑制する、ビタミンDは免疫システムや炎症反応を調節して円形脱毛症を予防する、ノコギリヤシの脂肪酸とフィトステロールは5a-還元酵素の働きを阻害してDHTを抑制する、漢方薬の甘草は男性ホルモンを抑制する、中・強強度の有酸素運動を週三回、洗浄力が強すぎるシャンプーを避けてアミノ酸系のものを選ぶ(~グルタミン酸、~アラニン、~グリシン、~サルコシン、~アスパラギン酸の表示のあるもの。ただし整髪料を頻繁に使う人は高級アルコール刑の洗浄力が高いシャンプーを使わなくてはならない)、洗髪後は速やかに髪を乾かす。効果が現れるまでの時間は育毛剤を使っても一年半から二年かかるようです。
・・・ちなみに多発性硬化症の視覚障害の原因であると思われる5a-ジヒドロコルチゾールを減らして眼圧を下げる方法も5a-還元酵素の抑制で亜鉛、ビタミンB6、リコピンやベータカロテン、大豆イソフラボンを摂取することです。
5a-ジヒドロコルチゾールは目の水晶体で合成されて房水(角膜と水晶体の間を満たす液体でこれらに栄養を供給しつつ老廃物を除去する働きと眼圧を一定に保つ働きをしている)に存在
※
《性器フローラを構成している細菌》
健康な膣内はラクトバチルス属(ラクトバチルス・クリスパタス、同ガセリ、同イナーズ、同ジェンセニーなど)とデーデルライン桿菌という乳酸菌が九十~九十九パーセント以上を占めており、糖を分解して乳酸を生成することで酸性環境(pH3.8~4.5)を維持して他の細菌が定着・増殖するのを防いでいます。多くの細菌の生息可能pH値は5.5~9.0。また過酸化水素という活性酸素種の一種を生成し免疫応答を誘発することで免疫機能の維持も行っています。ただし過酸化水素の代謝には鉄分を原料とするカタラーゼまたはペルオキシダーゼという酵素の働き、あるいは安定した分子になるために不飽和脂肪酸から水素を奪う必要があり、後者の場合過酸化脂質を生成してしまいます。しかもこの反応は水素イオンを失った脂質ラジカルが存在する限り繰り返され「自動酸化」と呼ばれますが、ストレスや疲労で免疫力が低下している時、激しい運動後(呼吸によるPH血の酸性化)、膣の洗いすぎ(除菌からの回復のための大量分泌および洗浄剤に耐性のある日和見菌のシェア拡大)、妊娠時や閉経後などホルモンバランスが乱れている時、そして抗生物質の使用などにより過剰に進行すると細胞膜の脂質を破壊して機能不全に陥らせたり、ナトリウムイオンの細胞内への流入を促進して細胞死に至らせたり、細胞死の最終実行因子であるカスパーゼという酵素群の活性化、ミトコンドリアの核に収納されているシトクロムcなどのアポトーシス誘導因子を細胞質まで移動させたり、動脈硬化、がん発生リスクの増加、老化促進(しみ、しわ)、アトピー、ニキビなどをもたらしたりします。自動酸化が最も活発になるのは弱酸性~中性(pH5.5~7.4)の範囲で、酸化が進むと鉄や銅などの金属イオンの溶解度が高まり、過酸化水素と結合してより強力な活性酸素種であるヒドロキシラジカルに変化してしまうため(フェントン反応)これが細胞の大きな酸化ダメージを与える(フェロトーシス:鉄依存性細胞死)上に過酸化脂質の生成も増大してしまいます。脳においては特に鉄が非常に多く蓄積する線条体でダメージが大きく、主要な神経伝達物質であるドーパミンもまた(中性環境で)自動酸化を受けやすいためにスーパーオキシドアニオンや過酸化水素(活性酸化素第一、第二形態)の生成と共にドーパキノンに代謝され、蓄積されてドーパミン作動性ニューロンを死滅、脱落させたり(パーキンソン病の発端)、より強力な神経毒性を持つ6-ヒドロキシドーパミン(6-OHDA)を生成してドーパミン作動性ニューロンだけでなくノルアドレナリン作動性ニューロンも障害してやはりパーキンソン病を誘発する他、ミトコンドリアの機能を低下させてATPの生産能力を低下させることもします。
鉄分(特に非ヘム鉄)は特に病原性を持つ細菌にとって増殖のためのエネルギーとなる物質で大腸菌やサルモネラ菌、赤痢菌、ウェルシュ菌、ブドウ球菌、緑膿菌、シトロバクターなどの悪玉菌は「シデロフォア」という鉄分と強力に結合する物質を分泌しており、遊離鉄だけでなくトランスフェリンやラクトフェリンに包まれた鉄分さえ奪い取って自身の増殖や毒性の強化に利用しますから鉄分が過剰な環境(足裏への衝撃が激しいスポーツによって赤血球が大量に壊れた時や溶血性の毒素を作る黄色ブドウ球菌が増殖した時など)では善玉菌より悪玉菌や日和見菌が繁殖しやすくなります。したがってこれを防ぐためにラクトバチルス菌は同様の「シデロフォア様物質」を産生して悪玉菌や過酸化水素よりも先に鉄と結合し、酸化して三価鉄とし、鉄たんぱく質のラクトフェリンはそれをキレート化(鉄イオンを取り囲むこと)することで彼らに利用されないよう防御策を講じています。それでも鉄を原料とする数百種(ヒトの遺伝子の2%を占める)の酵素(鉄利用の0.3%)や貯蔵形態のフェリチン(鉄利用の20~25%)や鉄輸送たんぱく質のトランスフェリンなどはキレート鉄を利ま用することができるそうです。そしてこの働きにより悪玉菌は飢餓状態に陥ってラクトバチルス属優勢の膣内環境を維持することができます。なおラクトフェリンはミトコンドリアの機能回復や鉄欠乏性貧血の改善などの効果もあります。
※非ヘム鉄(無機鉄/二価鉄)の種類―――小松菜、ほうれん草、ブロッコリー、ひじき、きくらげ、大豆、納豆、枝豆、プルーン、煮干し、アサリ、シジミ、卵黄、牛乳、鉄サプリメント、鉄強化食品などに含まれ、胃酸で分解されるが腸での分解率は2~5%しかないため吸収されなかった分が残存して悪玉菌の増殖に利用されるリスクがある。さらにコーヒーや紅茶に含まれるタンニンや穀物(米ぬか、玄米、大麦、小麦、ハト麦、キヌア、アマランサス、とうもろこし)やピーナッツ、ゴマ、インゲン豆、ヒマワリの種、亜麻仁油に含まれるフィチン酸によって吸収を阻害される。ゆえに貧血対策に鉄サプリだけ摂ってもダメで、ビタミンCやクエン酸や動物性たんぱく質と一緒に摂る、あるいはラクトフェリンの錠剤やヨーグルトを一緒に摂って悪玉菌の勢いを削がなくてはなりません。さらに体内での使用を考えればヘモグロビンの合成や鉄輸送体の安定化に必要な酵素の材料である亜鉛(亜鉛欠乏性貧血と鉄欠乏性貧血は合併する)と同じく赤血球の合成に必要なエネルギー(ATP)を作るミトコンドリア内での生成プロセス(クエン酸回路の運営)に必要なマグネシウムも十分に摂取する必要があります。特にマグネシウムはサプリメントの形で摂ると吸収率が4%しかないと言われていますのでにがりやスポーツ飲料など水溶性マグネシウムとして、またエプソムソルトや入浴剤の形で皮膚から摂取することが勧められています。(ヘモグロビン濃度や赤血球数が回復する)
・・・・ちなみに鉄の争奪戦の絶対的な第一位はマクロファージでそのずば抜けた回収能力で95%の鉄を回収します。溶血または破壊された赤血球を感知するとマクロファージはヘムオキシゲナーゼ(HO-1)で分解してフェリチンに変換して肝臓へ運びます。そして鉄分の輸送体(ゴンドラ)であるフェロポルチンをも分解して悪玉菌に奪われないように隠します。ただしマクロファージ自身が鉄と一緒に取り込んだ結核菌やサルモネラ菌に鉄を利用されて増殖を助けてしまうことがあります。
膣内の悪玉菌及び日和見菌―――ガードネレラ・バギナリス(細菌性膣炎の主原因)、カンジダ・アルビカンス菌(真菌。性器カンジダ症の原因)、大腸菌やブドウ球菌などの嫌気性菌(膣内に酸素が発生すると増殖し、慢性子宮内膜炎などを起こす)など。カンジダ菌は抗性物質の使用で増えるので仮に口腔フローラのアクチノマイセス属(放線菌)の抗性物質産生菌であるストレプトマイセス属が膣内に侵入して増殖することでもカンジダ膣炎を発症するかもしれません。
悪玉菌が増えた時の症状としてはオリモノの変化、悪臭の発生、デリケートゾーンのかゆみ、灼熱感などがあり、不妊に悩む人は子宮内のラクトバチルス属の割合が六割にまで減少しているそうです。膣内に限っては日和見菌を優勢にしてはいけないのです。
オリモノの変化に関しては善玉菌優位の時はヨーグルトのようなかすかに酸っぱい匂いがしますが、カンジダ菌が増殖すると酸っぱい匂いが強くなり、細菌性膣炎になると魚が腐ったような生臭い匂い(トリメチルアミン)と灰色がかったオリモノが出て、トリコモナス膣炎や淋病のような性感染症になると泡立つ黄色いオリモノや悪臭が出ます。
※
一方「陰茎フローラ」を構成する細菌は皮膚フローラと似ていて表皮ブドウ球菌、連鎖球菌(ストレプトコッカス。糖から乳酸を生成して主に乳酸発酵によってエネルギーを得る)、アクネ菌がシェアを占めると同時に女性の膣内と同じくラクトバチルス属(イナーズ腫やクリスパタス種)が乳酸で酸性環境を作り上げ、また精液にも含まれ、コリネバクテリウム属は包茎の包皮や亀頭のくびれ部(冠状溝)に常在し、皮膚のバリア機能の保護や乾燥予防、外部菌の定着抑制などの働きにより性交為による膣内フローラからの病原菌やガードネルラ菌やカンジダ菌の感染や酸性ダメージに備えています。カンジダ菌は健康な男性の皮膚、口腔、腸管、陰茎(亀頭、包皮)に常在し、疲労、ストレス、包茎による蒸れ、抗性物質の使用などにより病原性を発揮してカンジダ性亀頭包皮炎を発症します。ちなみに射精直前に分泌される尿道球腺液(我慢汁)や精液はアルカリ性なので膣内の酸を一時的に中和して精子と陰茎を保護します。
※
《各部位の皮膚フローラを構成している細菌》
各部位の皮脂量や湿度や温度によって優勢になる菌が異なります。
・背中は皮脂量が多く、脂質を栄養源とする親油性の細菌が定着しやすい。したがってアクネ菌が優勢で欧米食などによって皮脂の分泌が増えるとニキビができます。背中と言えば冷水を当てることで活性化する褐色脂肪細胞が良く知られ、体温維持のために熱を産生する働きがダイエットや冷え性の解消に効果があるとされていますが、実際にはあまり増やしてはいけない細胞です。寒冷刺激によってこれが活性化すると熱産生のためにミトコンドリアによるリン脂質(中性脂肪から脂肪酸を一つとってリン酸化したもの)の合成を促進して燃料を増やすと同時に同電子伝達系におけるATP産生に割り込んでエネルギーの生産量を減らしてしまうからです。(水素イオン(H⁺)を熱産生に消費してしまう)東京科学大学の研究では女性は女性ホルモンの影響により男性よりもリン脂質の合成を促すPGC-1aペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ共役因子-1a)というミトコンドリアのエネルギー代謝を制御するタンパク質をたくさん作るので糖尿病や肥満になりにくいと結論していますが、特に悪玉コレステロールに分類されているリポタンパク質を分解しすぎると末梢組織の手足の冷えや首や顔のシワを生じさせる原因になる可能性があります。さらに冷えもまたシワや喘息&アトピー性皮膚炎、花粉症などアレルギー疾患の原因になります。
コレステロールにはHDL(高比重リポタンパク質、善玉コレステロール)とVLDL(超低比重リポタンパク質)があり、前者は脂肪細胞から分泌されて血液中に放出され、全身の組織から使用済みまたは余分なコレステロールを回収して肝臓に戻す働きをしており、後者は肝臓に貯蓄された中性脂肪が必要に応じて分解されたものとコレステロールを全身の組織に運び、各地の脂肪細胞や臓器や脳の神経細胞などに食糧として渡し、代謝されてまた肝臓に戻ってくるというアンパンマンのような働きをしています。その受容体が多く発現しているのは心臓や骨格筋や脂肪組織などエネルギー代謝が激しい場所の細胞表面で、褐色脂肪細胞の分布が多い首の後ろや肩甲骨周り、脇の下心臓、腎臓付近と一致しています。VLDLの詳しい代謝経緯を説明しますと各組織でリポタンパクリパーゼによって中性脂肪(トリグリセリド)を一つ分離したVLDLはコレステロール含有率が高まったIDL(中間比重リポタンパク質)となり、肝臓に戻ってきて半数はIDLのまま待機状態にされ、残りは肝性リパーゼによってもう一つ中性脂肪を取られてLDL(低比重リポタンパク質)すなわち私たちが悪玉コレステロールと呼んでいるものになり、コレステロールを全身の組織や皮膚に運びます。私たちは誤解していますがコレステロールは性ホルモンやコルチゾール、アルドステロンなど三十種のステロイドホルモンの材料であり、皮膚では日光浴によってビタミンDの前駆物質を作り出します。さらに余剰分は胆汁酸に変換されて前記の働きを助けます。LDLが肝臓で分解された時にもこれらの用途にリサイクルされますし、さらにタンパク質を含んでいますので細胞膜の材料にもなります。(丸元淑生さんの『図解、豊かさの栄養学』新潮文庫によればコレステロール45%、タンパク質とリン脂質が22%、中性脂肪11%)したがって悪玉コレステロールにも体の中では与えられた正規の仕事があって対の働きをする善玉コレステロールが同強度の働きをすればバランスを取れるのですが、私たちは肝機能障害、腎機能障害、糖尿病、肥満、喫煙、運動不足によって悪玉優勢の環境を作り出して勝手にコレステロールの悪い面に注目して愚痴っているのです。健康診断ではHDLとLDLの比率に注目されますが、実際に血液や血管にトラブルを起こすのは血中に遊離した中性脂肪やコレステロールであってそれらが赤血球同士を粘着させることで細い血管に酸素や栄養を運べなくなり、ミトコンドリアもATPを作れなくなって疲労感をもたらすことになります。ちなみに赤血球が毛細血管に入り込むには二つ折りの形になる必要があり、血球中のEPA濃度が変形能を高めているそうで、それで肉より魚を食えと言われるのです。
中性脂肪やコレステロールを全身に運ぶゴンドラにはもう一つ小腸で生成されて食事由来の中性脂肪(含有率85%)を運ぶカイロミクロンという一番大きなリポタンパク質がありますが、体はこれらが悪玉菌のリパーゼにやられて悪玉化することのないように彼らに遭遇することのないリンパ管と血管を通らせて全身を巡らせています。しかし高脂肪食の過剰摂取によって体内に中性脂肪やコレステロールが増えすぎると肝臓での処理が追い付かなくなって血中に留まることになります。それを狙って特にエリシペロトリカセエ科の腸内細菌がVLDLやその代謝物(レムナント)を代謝すると「超悪玉コレステロール」と呼ばれる小LDL(小型高密度LDL)を作り出してしまいます。これは通常のLDLよりも粒子が細いために細胞の隙間や血管壁の内側に入り込みやすく、通常の受容体に認識されにくいので血液中に長く留まり、酸化ストレスを与えたり、本来無菌の血液中に免疫細胞を呼び寄せて炎症を起こさせたり、血管壁にプラーク(コブ)を形成、破裂して血栓および動脈硬化をもたらしたりする酷い奴です。しかも小LDLがもたらす動脈硬化を特にアテローム性動脈硬化(粥状動脈硬化)といい、冠動脈や大動脈、脳動脈などの太い血管ばかり狙って狭心症や心筋梗塞、脳卒中などの致死性の高い病気をもたらします。
またIDL自体も血中に留まると血管に血栓を形成する強力な原因になります。それはIDLがマクロファージに捕食されることで血管壁に入り込むことができ(LDLは酸化されなければ入れない)、さらにマクロファージを泡沫細胞に変える、すなわち逆に食ってしまうことで動脈硬化の元になるプラークに変えてしまう能力を持っているからです。これが血液凝固を促進させると血栓ができます。だからIDLも血中に吐き戻されるほど数を増やしてはいけないのです。(後述する好中球が持つNADPHオキシターゼも同じ作用をするのでこの酵素も過活動になるとアレルギー疾患や動脈硬化の原因になります。さらにはアクチンを重合させることでマクロファージを血管壁に接着する働きもします→抗酸化物質で相殺)
褐色脂肪細胞の活性化がこのような有害な代謝物を燃やしてくれるなら大歓迎ですが、実際には食事の運び役を選択的に熱産生の燃料として犠牲にしており、日本人の長寿は末端冷え性を代償にして成立していると言っても過言ではない状況になっています。それというのもHDLにしても「長寿ホルモン」と大層な通り名を与えられているアディポネクチンにしても皮膚バリアやホルモンバランスや代謝を維持してくれている要の存在である脂肪やコレステロールを守る立場にありながら(私たちと同じように)中性脂肪が増加して仕事が増えて手に負えなくなると活動をやめて悪玉菌や悪玉コレステロールに専横を許してしまう、戦うべき時に戦えない不甲斐ない職員たちだからで、私たちも楽をして痩せることばかり考えていないで腸内環境の改善と維持に尽力しなくてはいけません、冬場でも隙を見ては半そでで歩く外国人の颯爽とした姿を見習って。
※アディポネクチン―――脂肪細胞から分泌される健康ホルモン。インスリンの感受性を高めて糖の取り込みを促進、血管の炎症を抑え、修復を助けて動脈硬化や心血管疾患を予防、AMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)を活性化して糖や脂肪の燃焼を促進、悪玉菌を減らす、エクソソームを介してセラミドの新陳代謝を促進、脳に作用して食欲やエネルギー代謝を調節するなどの働きを持つ。女性や内臓脂肪が少ない人に多く、肥満(特に内蔵の脂肪細胞の肥大)、糖尿病、高血圧、メタボリックシンドロームを持つ人に少ない。
※リパーゼを分泌する主な細菌―――主に日和見菌のマラセチア菌、シュードモナス属、バチルス属、真菌のコウジカビやカンジダ菌、クモノスカビなど。ただしA.I.は細菌がリポタンパク質を分解することはないと言っています。
カンジダ菌が続けて出てきたので喘息&アトピー性皮膚炎との関連について述べておきますとこの真菌はアディポネクチンが活性化しているAMPKの働きによって抑えられ、その活動が低下すると発症及び悪化すると考えられています。AMPKの働きはアトピーの原因とされる炎症性サイトカインのIL-4とIL-13とTNF-aの放出を抑制し、フィラグリンやロリクリンといった皮膚バリアを構成するタンパク質の合成を促進し、細胞外の栄養状態と細胞内のエネルギー量を感知して細胞の成長、増殖そして炎症を促すmTORのシグナル経路を強力に抑制し、さらに脂質の代謝に関与してセラミド(皮膚バリア)の合成を促すことで乾燥を防ぐ働きなどをしています。―――ちなみにフィラグリンとロリクリンは表皮の顆粒層で産生され、乾燥などで減少すると細胞から水分が逃げて肌荒れや炎症を起こしやすくなるそうですからこれも指先の冷えやしもやけに関与していると言えそうです。自動酸化による水素争奪戦による細胞膜の脂質破壊も。
カビ頭痛は腸内のカンジダ菌の割合が増えた腸カンジダ症を主原因としており、その毒素が腸壁から血液中に飛び出して体内を巡ると頭痛、めまい、耳鳴り、下痢、関節痛、抜け毛(ふけとかゆみを伴う)、集中力とやる気の低下、うつ症状を引き起こします。さらに脳内でアミロイドβを活性化させてアルツハイマー病の原因にもなるようです。
納豆を大量に食べると特にねばねば成分がカンジダ菌や悪玉菌の増殖を促進して炎症を悪化させると言われています。また鉄分も好んで餌にするため貧血対策として鉄サプリメント(非ヘム鉄)の摂取してもカンジダ菌の増殖につながるだけで症状が回復しないことがあります。
寒冷刺激が慢性化するとがんの発生や進行が促進される危険性があります。それはがん細胞の表面にあるベータアドレナリン受容体にノルアドレナリンが結合するとがん細胞が活性化するからです。さらにノルアドレナリンによって分泌された神経栄養因子(NGFやBDNF)もがん組織の周囲に交感神経を新生して正常な神経活動に割り込ませるような働きをすることがあり、がん細胞の増殖や移動、周囲組織への浸潤を助長してがんの悪性度を高めてしまいます。そしてそのストレスでまたノルアドレナリンが分泌されてしまうという悪循環に陥ってしまいます。雪国の人々が脂肪をたくさん摂って体を大きくしているのも寒冷刺激の慢性化を防ぐためと言っていいでしょう。私たちもせめて冬ぐらいはアイスクリームや冷たい飲み物を控えてマスクと耳あてで鼻と耳と気道を防寒し、寝るときには頭から布団をかぶって顔面も冷えから守るような対策を講じた方がいいと思います。
・足の裏は角質が厚い、汗腺(エクリン腺)が多い、湿度が高くなりやすいという特徴があり、体の中でカビの多様性が最も高く、細菌の種類も豊富です。白癬菌(はくせんきん、水虫の原因)、カンジダ菌、アスペルギルス属など。典型的な足裏の匂いは短鎖脂肪酸を分解したときにできるイソ吉草酸(納豆のような香ばしい匂い)や酪酸菌が生成する酪酸(銀杏のような、うんちのような匂い)によるものです。
・手の平には表皮ブドウ球菌やミクロコッカスやアクネ菌の他に外界の者に触れることで付着する一過性細菌が存在し、黄色ブドウ球菌や大腸菌、緑膿菌など食中毒や感染症を起こす菌類はこれに属します。手の平の匂いを構成するのは表皮ブドウ球菌の乳酸、放線菌のプロピオニバクテリウム属の短鎖脂肪酸(酸化すると枝豆の匂いや焦げた匂いがでる)、黄色ブドウ球菌のアンモニア、皮脂の酸化によるジアセチル(バター臭)など。
・脇のフローラを構成する表皮ブドウ球菌、アクネ菌、コリネバクテリウム属は皮膚のバリア機能を維持して黄色ブドウ球菌などの悪玉菌の増殖を防いでいますが、特にコリネバクテリウム・ミニュティッシマムや同ストリアトゥムはワキガ(腋臭症)と深く関連があり、汗に含まれる中さ脂肪酸やたんぱく質やアンモニアや老廃物(これら自身は無臭)を分解して3メチル3スルファニルヘキサン1オール酸(硫黄臭)や3ヒドロキシ3メチルヘキサン酸(スパイス臭)を生成します。男性ホルモンは脇の下のアポクリン腺と皮脂腺の活性を促して汗と皮脂を分泌させ、日本人においては七種類+αの男臭さを作り出しています。
日本人男性のわき臭タイプ―――M型:ベースのミルク様臭、A型:酸臭、C型:カレー臭、スパイス臭、K型:カビ臭、E型:蒸し肉様臭、W型:生乾き臭、F型:鉄臭、他。
その他の体臭元―――アセトン臭:糖質制限やダイエットによりケトン体や脂質代謝の割合が増加すると肥満者や糖尿病者寄りの酸っぱい匂いを体からだけでなく息からも発するようになります。しかし健康的な脂肪燃焼時の匂いは俗に「女子高生の匂い」と呼ばれるアセトンを含んだ甘い香りである。
ストレス臭:ストレスで増えた活性酸素によって皮脂が酸化されると発生し、硫黄化合物が含まれポップコーンや玉ねぎ、腐った卵のような匂いを発する。あるいは肝機能の低下によりアンモニアの分解が不十分になり血中を巡ると毛穴からアンモニア臭が発散することがあります。尿のような匂いの体臭は他に肉の食べ過ぎや酒の飲みすぎ、運動不足などでも発生します。腸内環境がさらに悪化してタンパク質の腐敗が起こると生ゴミや便臭を発することになります。
加齢臭(男女とも)の主な原因であるノネナールは過酸化脂質と皮脂が結合することで発生します。古い油の匂い、青臭い匂い、ロウソクの匂い、古本、枯れ草、湿った畳、腐ったチーズのようなにおいなどと形容されます。実はビールやワインにも含まれているにおい成分。
コリネバクテリウム属は上気道ではリパーゼを分泌して遊離脂肪酸を利用して肺炎球菌の増殖を妨げ、黄色ブドウ球菌が生成する毒素(溶血素)の活性を直接阻害する種を駆使してこれらが上気道に定着するのを抑制しています。さらに樹状細胞や肺胞マクロファージ、T細胞などの活性を調整して肺炎球菌やRSウイルス感染症に対する抵抗力を高める働きもしています。また顔の皮膚ではシミ、そばかすの原因になります。
《腸内環境を整えると肝臓機能の改善につながる》
男性型脱毛症の治療でDHTを(薬で)抑制すると肝機能低下の副作用が現れることが報告されていますが、これは特に男性で相対的に女性ホルモンの割合が増えることが原因ではないかと思います。肝機能障害が起きると男性は乳房が女性化し女性は無月経になります。肝臓と腸は「腸肝循環」と呼ばれる仕組みで結ばれていて肝臓で作られた胆汁酸(脂肪分解作用)は腸へ送られて腸内細菌によって代謝された後、再び肝臓へ戻って再利用に回されることになっています。そして腸内細菌が作り出す短鎖脂肪酸の炎症抑制作用は肝臓の細胞を守ります。腸内環境が乱れるとこの循環に障害が生じるだけでなく悪玉菌がタンパク質から作り出したアンモニアなどの有害物質が肝臓に送られてきて解毒の負担と炎症リスクが増し、機能低下が引き起こされます。
※
補足情報:ウイルス感染や炎症反応によって出動した好中球(白血球の一種)は自身が持つNADPHオキシターゼによってスーパーオキシド(活性酸素種の第一段階)を、ミエロペルオキシターゼ(MPO)という酵素で次亜塩素酸を生成し、その強力な殺菌作用によって細菌のたんぱく質や脂質を酸化することで異物を排除します。またスーパーオキシドが代謝されてできる過酸化水素はヘモグロビン中のヘムを酸化的に破壊して二価鉄から三価鉄に変換して悪玉菌が利用できないようにします。次亜塩素酸は有機物やウイルスや細菌と反応すると奪った電子によってすぐに塩化物イオン(食塩の成分)と水に分解されますし、自然界では紫外線や高温で分解され、人体ではタウリンやグルタチオン(抗酸化物質)によっても無毒化されますので非常に安全で環境負荷の低い殺菌剤です。
ただし、タウリンに注目すると風邪や感染症にかかりやすく、ストレスや過労を抱えやすく、食事によって炎症反応を起こしやすく、そして口呼吸になりがちな現代人にとってタウリンは亜鉛やビタミン類と同じく不足しやすい栄養と言えます。実際に肩甲骨の間のコリや運動不足や過労による息切れや息苦しさを感じる人はタウリンを摂取すると胸が広がって呼吸がしやすくなるのを感じることができるでしょう。(200mlのドリンク剤を二週間。養命酒よりも安価で効果が速い)また肩甲骨の間の一点を意識しながら十秒間力を入れる運動も効果があるそうです。基本的に覇気のない日本の若者たちや激しいトレーニングをする部活学生やアスリートにもタウリンを摂取することを勧めます。(私自身もっと早く気づけばよかったと思っています)
タウリンは次亜塩素酸のスカベンジャー(掃除人)であると共に胆汁酸の成分でもありますから不足すると肝機能の低下、慢性的な炎症、疲労の抜けにくさ、細胞膜の安定性の低下が起こります。

コメント